迷い小太刀に若輩者

pixivで狐猫犬氏とプロットを交換して書いたもの。

プロット

①初夏の幻想郷、毎朝の日課として鍛錬に励んでいた妖夢、いつものように二刀流の型の構えを取ろうとしたとき「白楼剣」が抜けなくなっていることに気付く。
②朝食時、それとなく幽々子様に相談してみるも、解決策はなし。今日は仕事はいいから幻想郷のほかの住人に相談してきなさいと助言される。
③一日かけて、様々な人に、相談し、時には解決策と思われる方法(力技含む)を試すも効果なし、
付喪神勢より「剣が抜けないのは、妖夢自身が抜くのを迷っているから」ではないか?と言われる。
④ 白玉楼に帰ってきた妖夢、自分の悩んでいたことを思い出し、剣を抜こうとしてみるとすんなりと抜けた
めでたしめでたし





 元々、小太刀というものは組討時に相手の鎧の隙間を刺して殺す為に存在します。言うなれば、接近戦のお供なのです。
 他にも、武勲を示すために相手の小指や鼻を切ることに用いたり、首級を得るためのものでもあります。
 太刀と比べれば使用頻度は限られてしまいます。もちろん、二天一流などの二刀流の際に小太刀を使用している人も居ますが。
 私も刀を2本持ち、手数を増やすために白楼剣を用いることはあれど、普通は使うことはありません。庭木の手入れぐらいでしょうか、使うとしたら。妖刀なので切れ味がよく、物を斬るのに最適です。

 天界に幽霊が集められていた時も、神霊廟に探りを入れにいた時も私は白楼剣を使うことはありませんでした。
 だが、もしものときに白楼剣を抜くこともあるでしょう。
 誰もいない白玉楼のお庭の中で、私は宙に仮想敵を思い浮かべます。ぼわんと半霊が形を変え湧きでたのは紅い巫女服をまとった博麗霊夢。相手に不足はないです。
 楼観剣を握り、私は博麗霊夢の圧倒的な弾幕の手数をグレイズし、針を避け、陰陽玉が踏みつぶさんとしているところをギリギリで身を引きます。
 そういった手数の多さは見せかけであり、真の狙いは瞬間移動からの奇襲。私の注意を引いてると思った隙に、飛び蹴りが空を切り襲ってきます。
 楼観剣の一振りでは間に合わない。この場においての選択肢は弾幕を放つなどもあるが威力において問題があります。
 そうなれば、腰に据えてある白楼剣を抜かねばなりません。利き腕じゃないけど、瞬時の膂力と技術的な応用力は十二分に機能します。
 靴の裏が顔面に向かって飛んでくるところを冷静に見定め、私は白楼剣を抜ーーー


「あれ、抜けない!」

 半霊といえども、ダメージは存在する。私は巫女の形をした半霊に蹴り飛ばされてしまいました。


「未熟だった、というわけね」

 はいそうですと、幽々子さまのお言葉にぐうの音も出ないです。
 一体、私の何が悪いのだろう。なぜ、白楼剣が抜けなくなってしまったのだろう。今も、刀を抜こうと鞘と柄を握って離そうとしますが上手くいきません。

「ご飯中にお行儀悪いわよ。心配なのはわかるけど、ご飯食べなさい」

 長い白檀で作られた食卓。そこにいつものように用意した朝ごはんが待っています。
 けれど、私の喉は朝ごはんが通りません。自分でも思ってた以上にショックだったのかもしれません。なんというか、刀そのものに裏切られた気分といっても差し支えないでしょう。

「妖夢、あなたもしかして道具のせいにしようとしてないかしら」

 そう言われると、私の未熟さを再度認識させられてしまいます。そうだ、なぜ私自身が原因だと思わないのか。

「少し、お外に行って来なさい。何か原因が分かるかもしれないわ」

 今日は仕事は休めと言われて、私は失意のなかで自分探しの旅に出ることにしました。

 迷いの竹林を抜けた先にある永遠亭。その一角にある診療室。
 医者である八意永琳は薬の調合を得意としていますが、東洋医療、西洋医療に通じています。
 でも、今回担当してくれるのは鈴仙さん。なんだかんだこの人が一番相談しやすいです。

「じゃあ、昨日見た夢って何?」

「夢ですか?」

 白衣を着て格好つけてる鈴仙さんに呆れを感じますが、聞かれたことにちゃんと応えます。
「そうですね、虎に乗る夢を見ました」

 そうすると、鈴仙さんはなにやら本を取り出してページをしゃくしゃくと捲っています。

「えーっと、夢診断によれば、力を失いつつあるみたいね。でも、誰かが助けに来てくれるらしいわよ」

「それってまじないか何かですか?」

 お医者さんらしいことを言っていないような気がして私は怪訝そうになっていました。

「いやいや、コレも立派な医学なのよ! 精神医学といって、フロイトという学者が提唱した夢診断って言うの」

「えっと、それとこれとどう関係が」

「いや、私ね、精神医学をやってみようかと思って形から入ろうかなーと」

「それで、私の悩みは解決されるのでしょうか?」

「えっと、それは……」

 目が泳ぐ鈴仙さんをジト目で私は見つめます。
 それに焦ったのか、鈴仙さんは取り繕うように手をわたわたと振り回して言いました。
「うん、妖夢は特に悪くない! うん!」

 なんだか、適当な事を言われて呆然とする私。
 けれど、鈴仙さんにも思うことがあるのか親身になって答えてくれました。
「私から見て、妖夢に問題があるとは思えないのよ」

「それはどういう……」

「なんというか、いつもと変わらない感じ? 特に捻くれたりしているわけじゃないし」

 なんだか釈然としない受け答えだったか、鈴仙さんの言葉を信じてみることにしてみた。
 それは私にも確証があったからだ。確かに、私はいつもと特に変わらない。白楼剣を抜くことが出来た時と変わないはずなのだ。

「残念ながら、私はそこまで力になれないわ」

「いえ、お話を聞いてもらって助かりました」

 別れの言葉を告げて私は再度、方法を見つけるために幻想郷をぶらつくことにした。
「きっと悪霊が付いているのよ! お祓い料ーーー」

 かもろうとする巫女をいなし。

「鬼の力で抜いてやろう! ふん!!」

 鬼に力ずくで抜いてもらおうとしたけどだめでしたし。

 そうこうしている時に日が暮れてしまって、結局わからずじまいで終わってしまいました。
 帰途につこうと魔法の森を抜けていた時に唐傘が木の叉から生えていました。
「うらめしやー!」

 憔悴していたのか特に怖いという感情もなく、ドヤ顔をしている妖怪の人差し指で頬を突いてみました。
「ひえ!」

「おやおや、小傘さんじゃないですか」

 ちょっと意地悪そうな顔を浮かべる私。結構、いじめがいのある子だと私は思います。
 この子は時折、鍛冶をしてもらっている妖怪、多々良小傘でした。霊的な道具を扱うのに長けていて、色々な妖怪や魔法使いなどに重宝されています。
「何か悩み事? ちょっと顔が悄気げているけど」

 心配そうに私に語りかけてくるので、藁にもすがる思いで私は自分の悩みを打ち明けてみました。
「なるほどなるほど。なんとなくわかったよ!」

 そう言うと、小傘は私の白楼剣を指さして笑顔を作りました。
「その刀は拗ねてるんだよ!」


 付喪神としての本能なのか、私の刀について違った見方を示してきました。
 確かに、白楼剣は妖刀であるがゆえに自我が備わっています。
 私が戦闘で使うことがなく、庭木を剪定するために使っていることに屈辱を感じてしまったのかもしれません。
 それに、私にはこの刀に対して迷いがあったのです。どうせ、実戦には使わないのだろうと。
 実際、私がこの刀を抜くのは極稀です。弾幕勝負故、接近戦なんてものがあまりないからです。
 それに、楼観剣の間合いを維持しつつ戦うため、白楼剣の存在意義は薄れていって……
 結局、白楼剣が抜けないという事態は無意識のうちに色々な思惑が積み重なって、調子が崩れただけなのかもしれません。

「ごめんね、折角お祖父様の代から仕えてくれているのに……」

 私はぎゅっと白楼剣の鞘を握りしめ、深く頭を下げて謝りました。
 白玉楼のお庭で、私はすっと白楼剣を抜きます。そして、一振り二振りと左腕をしならせて虚を切り裂きました。

「私の迷いは私自身で切らねばならないのですね」

 口から思いをこぼしながら、私はパチンと白楼剣を鞘に戻し、いつもの仕事に戻ります。

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント