ウサギさん、戦う

 人間さんは自分達の過ちによって滅んでしまいました。地球は人間さんのせいでめちゃくちゃになっていて、生態系も機能していません。
 地球が滅びる前に人間さんは月に移住しようと考えました。ですが、月をテラフォーミングするには人間さんの手では難しかったのです。
 なので、人間さんは月でも生きていけるウサギさんを派遣することにしました。ウサギさんは自分で子供を作るしそれなりに頭も良いので、テラフォーミング計画は順調に進んでいました。
 でも、人間さんはせっかちなので、待つことが出来ず滅んでしまいました。

 ウサギさんは人間が滅んだ後も、命令を守り続けました。命令を守り続け、月にお家を作ったり、畑を作ったりしていました。
 粛々と仕事に従事していましたが、そんなウサギさんには重大な問題があったのです。

 それは、退屈でした。

 色々なものを作っていたウサギさん。確かに、仕事に従事することはそれなりに満足はあったのですが、つまらなかったのです。
 あるウサギさんは、自分たちは奴隷だと言いました。仕事というものに満足感を抱いて働いていましたが、それは命令されているだけのことだとウサギさんたちは考えました。
 ですが、働かなければ存在意義が失われるし、働くのをやめたら更につまらなくなります。
 娯楽を作らなければ、ウサギさんたちは生きていけないことを悟りました。
 最初は歌を歌ったり、彫刻を彫ったり、お話を作ってみたり。ありとあらゆることをしてみましたが、どうもパンチに欠けました。

 ある日、ウサギさん達は些細なことで喧嘩をしました。殴り合いの喧嘩をしてみました。
 ひと通り殴りあったところで、ウサギさんは仲直りをしました。ウサギさんは本来温和で賢いから、人間さんよりも簡単に仲直りができたのです。
 殴り合いの喧嘩をしてみたところで、ウサギさん達は重大な発見をしました。

 戦うことは最も楽しい。

 痛みから快楽に変わる脳内麻薬を滾らせて、如何にして相手を打ち倒すかという高度な駆け引き。これほどまでに完成した娯楽は他になかったのです。
 大きな闘技場をウサギさん達は作りました。たくさんのウサギさん達が収容できるように、今まで培った文化的なものを詰め込んだドームを作りました。
 戦うためのルールを作りました。医療技術が高いため、瀕死の状態でも体を治せたので、最低限のルールとして相手を殺さないことを定めました。

 決して、相手を殺さず、殺してしまったら悔いること。最後は仲良くなること。

 武器を使わず、ウサギさんたちは殴りあいの喧嘩を楽しみます。
 最初は立ち技主体の殴り合いから始まり、つかみ技や関節技など、ギリシャ人やローマ人が数百年かけてパンクラチオンを発展させたように技術は上がっていきました。
 強いウサギさんは尊敬の的になりました。ですが、弱いウサギさんも健闘を讃えられ、決して見下すようなことはしませんでした。

 とある星の宇宙人さんが月を訪れた時には、月は美しい都となっておりました。宇宙人さんも満足の出来上がりでした。これなら、人間さんも喜んだことでしょう。
 しかし、宇宙人さんはウサギさんのことを野蛮だと思いました。闘技場の試合を見たからです。
 殴りあいという野蛮なことは即刻辞めるべきだと宇宙人さんは言いましたが、ウサギさんは笑って断りました。

「こんなに楽しいことを辞めるわけないじゃないですか」

 月が発展して、ウサギさんたちは地球の再生を考えるようになりました。宇宙人さんに地球が滅びていることを教えられたからです。
 新しい星の支配者として、ウサギさんは地球に暮らすことを考えました。
 培ったテラフォーミングの技術を地球でも使用し、順調に地球を再生しました。
 宇宙人さんはその技術力に驚嘆しましたが、ウサギさんのことを野蛮な生き物だと決めつけていました。戦うことをやめなかったからです。
 地球再生はウサギさんにとって命令ではなく、自分たちの好きなこととして始めました。作業を続けるうちに、ウサギさんは自分たちについて納得しました。

 何かを勝ち得るために戦うことは最高の娯楽だ。

 地球を我がものとするために頑張ることが大事なことを教えてくれたのです。困難を自分の手で打ち倒す快楽。これは最高の娯楽だとウサギさんたちは悟ったのです。
 地球上にウサギさんの国家を作って、そこで意見の食い違いから戦争や内紛がおきましたが、それも最上級の娯楽の一つとしてでした。

 決して、相手を殺さず、殺してしまったら悔いること。最後は仲良くなること。

 これらを守って、ウサギさんたちは今日も戦いに明け暮れています。

……ある戦いの際に、殺したウサギさんを供養するために、ウサギさんが死体を食べました。

 ウサギさんはとっても美味しい。

 ウサギさん達は革命的な発見をしたのです。

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